秒速5センチメートル

 やはり新海氏はこういう何気ない日常の中の心の機微をすくい上げた短編が得意というか好みなんだなと改めて実感。言ってしまえばたいしたストーリーもなく、ただ小学生時代の初恋をいつまでも引きずっている少年を描いただけというやたらと感傷的な内容でしかないのだけど、映像の美しさと音楽と身近にある風景によって見ている側にある種の感傷というか共感を生じさせるのが非常にお見事。ただ、切々と描かれた第一話と第二話に対して、表題作の第三話は尺が短くてすぐに終わってしまったのがちょっと残念。まあ、あれ以上描くことはないと言われればその通りなのだろうけど。前作の『雲のむこう、約束の場所』のような長編も今作のような短編もどちらも良かったので今後はどちらもバランスよく作ってくれることを期待。