第17回ファンタジア大賞受賞作三作

紅牙のルビーウルフ

ルビーウルフだのブラッディ・ファングだのという名称を用いるネーミングセンスと、中盤以降強力な味方が得られる都合のいい展開と(ひとりは伝説級の魔法使いだし変身魔法は役立ちまくりだし、もうひとりは隣国の姫でちょうど都合のいい能力のアイテムまで持っているし)、一発逆転の策がそれほどたいしたものではないのがマイナスポイントだが、受賞から刊行までの間にどれだけ手を加えたのかはわからないが準入選ではなく大賞であってもおかしくないと思うくらい良かったし気に入った。主人公のルビーウルフ(この名前にはやはりなじめない……)が魅力的な少女だったのが好印象。その反動なのか相方のジェイドが頼りなくなってしまっている気がするが(笑)

七人の武器屋 レジェンド・オブ・ビギナーズ!

『紅牙のルビーウルフ』『琥珀の心臓』『七人の武器屋』の三作の中でこれが一番期待できないかと思っていたら、意外にもすっげえ面白くて気に入った。軽いノリの作風とか少々のご都合主義展開とかが気になったら楽しめないだろうけど、そして普段はご都合主義は嫌いな方なんだけど、この作品はほとんど気にならなかった。この作風ならOKだろうって感じで。ほどほどに軽く明るく笑えて重過ぎない程度にシリアスで熱いこのバランスがすごく好みに合ったというか。主要登場人物の七人もそれぞれ魅力的で良かった。

琥珀の心臓

前半時系列が前後して少し戸惑うのと終盤の観念的というか人類補完計画みたいな展開がちょっとあれだが、遙、優子、敦也の物語の中心人物三名がいずれも非常に魅力的で好印象。三人のそれぞれの関係性、望み、立場、行動の設定がすごく上手い。作中における必然的な要素として歯車のように見事にかみ合っているというか。「ルビーウルフ」も大賞でもいいのでは? と思えたが、こちらも大賞でもいいぐらいだと思った。ただ傾向からすると大賞より準入選とかになりそうな作品だな、これは。


後発組も含めて個人的満足度は
七人の武器屋=琥珀の心臓>紅牙のルビーウルフ>電蜂=逆襲の魔王>マテリアルゴースト
という順。どの作品も新人らしい粗がありながらもちゃんと光るものを持っており、今期は豊作と言われるのも納得の出来だった。