そして扉が閉ざされた

そして扉が閉ざされた (講談社文庫)

そして扉が閉ざされた (講談社文庫)

文章は読みやすかった。いきなり地下シェルターに閉じ込められた状況から始まるのは面白かったが、途中はシェルターからの脱出のための試行に劇的な変化があるわけでもなく、事件の真相追求も堂々巡りで中だるみした。で、読み終わった時の感想は「評判がいい作品みたいだから期待してみれば、なんだ、こんなもんか」というのが正直なところ。(以下ネタバレ)そりゃあ主人公っぽい人物が無自覚のうちに殺していた(というより事故みたいなもんだけど)という真相は衝撃的かもしれないけど、読みながら実は自殺とか事故死とかいろいろな可能性は想定していたからそれほど驚かなかったんだよなあ。登場人物が実質上四人しかいないというのも問題か。犯人は意外な人物と考えてみれば、主人公っぽい登場人物だって容疑者に含めて考えてしまうし。それともう一つ。そもそも物的証拠はほとんどない状況で事件関係者の証言だけが頼り、かつ事件関係者もわずか四名というぐらいなのだから、単独犯ではなく複数犯で互いに嘘の証言をしているという可能性は十分考えられるわけで。それを最初から見落としているのがなんともなあ。実際、登場人物たちが意図的にそうしたわけでなく偶然が絡んだ部分もあるが、それが真相だったわけだし。(ネタバレ終了)というか、『ハサミ男』にせよ『七回死んだ男』にせよ他のミステリーにせよ、評判のいいミステリーってことで期待し過ぎだからあまり驚きも感じないし、がっかりしてしまうことになるのかな。ミステリーよりもむしろ他のジャンルの作品の方がこんな伏線があったのかと驚けるのかも。ミステリーだとどうしても最初から謎があることはわかっているわけだし。普通は謎解きを楽しむものなんだろうけど、謎解きよりも真相を知ったときの驚きを求めていたんだよなあ。我ながら楽しみ方や作品の選び方を間違えていたかも。